未来へはばたく志木っ子たちへ
毎月発行している広報しきに連載中の市長コラム「以心伝心」に掲載された内容を掲載しています。
令和2年4月号掲載分
未来へはばたく志木っ子たちへ
「ロバを売りに行く親子」という寓話があります。ある親子がロバを引いて歩いていると、「ロバに乗れば良いのに」と言われ、息子をロバに乗せる。すると、別の人に「子どもが楽をするなんて」と言われ、父親がロバに乗り、息子が歩く。今度は「子どもを歩かせるのはかわいそう」と言われたので、2人でロバに乗ると、「重くてロバがかわいそう」と言われ、持っていた棒にロバの足をくくりつけて担いだが、それを嫌がったロバが暴れ、橋から川に落ちてしまった、という寓話で、「人の意見ばかり聞いて主体性なく行動すると、結局はうまくいかない」という教訓を示しています。
先般、新型コロナウイルス感染拡大の防止に関する国からの要請を受け、市としても小・中学校の休校やイベントの中止など、苦渋の思いで決断をしましたが、このことに対し、賛成や反対、さまざまなご意見を頂戴しました。新型コロナウイルス感染症への対応については「国からの休校要請は、そこまでする必要はない」という意見や、「市中感染を抑えるためには、休校やイベント中止はやむを得ない判断だ」という専門家の意見があったことも事実です。しかし、現在、小・中学校や高等学校などに通っている児童生徒は、日本の総人口の約1割を占めており、クラスター(感染者の集団)がさらなるクラスターを生み出すリスクや、そのリスクから日本の経済活動が麻痺してしまうなどの広い視点からのリスクを考えた時、志木市においても休校は感染拡大の防止に大きな効果があると判断をしたところです。改めて行政の最大の使命は、市民の命を守ることであります。「ロバの寓話」ではありませんが、仮にすべての皆さまが「反対だ!」との意見であったとしても、時に信念を持って決断をしなければならない場面もあることに、ぜひともご理解を賜りたいと存じます。
このような中、新たな旅立ちの礎となる志木っ子たちの卒業式については、当初は教室での実施を考えておりましたが、未来に向かって羽ばたく卒業生の皆さんに、市としてエールを送りたい。そんな思いを込めて、先生方と児童・生徒のみが出席する形で、体育館にて挙行しました。
卒業された皆さんの気持ちを考えたとき、決して100点満点の卒業式ではなかったと思いますし、本来予定されていた形で皆さんを送り出せなかったことは、大変残念に思っています。突然終わりを迎えた学校生活に心残りはあると思いますが、当たり前に続いていた日常の尊さや、同じ目標に向かって励まし合えるクラスの友達の温かさなど、新しい発見もあったことも忘れないでください。
将来の志木市を支える志木っ子は本市の宝。皆さんのこれからの大きな飛躍と成長を心から祈っています。